プルメリア

プルメリア
2009.07.14 Tuesday 10:27

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その夜はうねるような暑さが大気中を流れ何人もの坊主が修行中にもかかわらず氷を口いっぱいに頬張り、やっと寝床についたのだった。

暗い蚊帳の中で一人の若い坊主が、僕はもう帰りたいとつぶやいた。

結局、その暑さのせいでどうにもこうにも寝れなかった他の坊主たちはその小さな小さなため息のようなつぶやきを誰もが聞かざるおえなかった。

シンとした一本の張りつめた糸が暗闇の中を通り過ぎようとしているその時、氷をがしがしと噛み砕いたまたもう一人の坊主が急に立ち上がった。

*ようし、それでは只今から身もよだつようなおぞましい話をお前らにきかせてやろうじゃないか。
と、目一杯声を荒げた。

大広間にあるいくつもの蚊帳の山からもぞもぞと蠢き、何人もの坊主が一つの蚊帳を目指して集まってくる。

+なんだ、皆起きていたのか。

@可笑しそうではないか。

¥それはどんな話だ。

%恐くなかったら承知しないぞ。

一つの蚊帳の中の蝋燭に灯がともされた。
炎の明かりに照らされ集まった坊主頭の影が障子の淵で揺らめいている。

*まずは、みな銭を放れ。でないと、わしは唇一つ動かさぬぞ。
なにしろわしはたった今、氷を喰ったのだ。痺れて動かぬ。少しでもそれを温めようと思うのなら、わしのふところを喜ばせぬか。

$なんだ、銭集めのたわけ者か、くだらん。

と、最長齢の坊主が怒鳴り、隣にいた坊主の頭をはたいた。

#おい貴様、銭をだせ、そうでないとこいつは本当に話さんではないか。

!いやじゃ、いやじゃ。聞いてもない話のためにどうして銭が放れるものか。

またごろごろと我がの蚊帳へ帰っていくものもおる。

辺りの大気が一層に暑さを増して、口の中の氷が溶けていくのがわかる。

*お前たちの中で、女の股口を見た者がおるのか。

#$%&+¥♤◉☆❖◯

坊主が黙る、黙る、一斉に黙る。

&◯女の股口を見たのか、大和尚が絶対に見てはいけぬと言われておったあの「かくしどころ」を?

#☆見たものは死ぬぞ

%$◉ひと月以内に死ぬぞ

坊主が一斉に怒鳴る。

*馬鹿どもよ、何ぞ見ても死なぬ、ほれ、わしがみたのはひと月もふた月も前のこと。こうしてわしがここにいるではないか。その話を聞きたい者は銭を投げえ。

最長齢の坊主が目を丸くし、もう帰りたいと泣いていた若い坊主が目を輝かせた。

銭が畳を打つ音だけが静まった夜に響き渡る。

*あの日はなあ。やたらと雨が降り続く日じゃった。

と銭袋の中を覗きながらあご髭を撫でた。

息を呑む坊主たち。

*わしがいつも通り夜更けのお経の後、便所に行った帰りの廊下の軒下で一人の女が濡れて立っておったんじゃ。女がここで何をしてるのか、と尋ねると女は黙ったまま唇一つ動こうとせぬ。
わしは、人を呼ぶぞと脅した。それでも女は前に垂らした黒髪の隙間からわしを上目でじっとみているのじゃ。まるで月を逆さにしたような目でこっちを見とる。恐ろしくなってのう、幽霊じゃと思った。わっと叫びながら、逃げようと思った。

わっと、というところで全員の身体が一瞬宙に浮いた。

*しかし、なぜか喉も身体もまったく動かぬわ。指だけが違う生き物のように震えてのう。必死にナンマンダブと心で唱えておった。
ふいに、女がけたけたと笑いだした。
わしは何度も舌を噛みながら、なぜそうも笑うのかと問うてみた。

そしたらなんと言ったと思う?

誰かの唾を飲み込む音が辺りに響いた。

*あんたの股口が開いておるぞ

#$%&+@¥
ワッハッハッギャッギャッウッホッホップップップ

+なんだ、お前のか

&お前の股口か

%そりゃ恐ろしいわい

#$%&+¥♤◉☆❖◯

皆が恐怖の中に滑稽な窓を見つけて、まるで逃げ惑う虫のように笑い転げた。

しかし、話し手の坊主は思い思いに笑い転げる坊主たちを一喝するように、立ち上がり大声で叫んだ。

*その女はいきなりわしを押し倒し馬乗りに股がり、わしの股口を喰ったのじゃ!!

と、勢いよくたもとの結び目をほどき、男の股口を露にした。

そこには股口の周りが赤く腫れ上がっているだけで、むしり取られたような皮膚が爛れて垂れ下がっていたのだった。

誰かが隣の坊主の肩に嘔吐した。かけられた坊主も前にいた坊主の背中に向けて嘔吐した。
嘔吐物が匂いを放ち、他の坊主もたまらなくなり嘔吐する。部屋中に胃液の匂いが充満する。

目を閉じ、手は天に向けられ、ゆっくりと深呼吸している。

*その時わしが見た女の股口、蛇のようにヌルヌルしておった。
真っ白な肌の先に内蔵の一部が出とるようだった。
何度ぬぐってもそこから溢れ出る液体は、わしの股口を包んでのう。

しかし、なんともいえぬ高揚感を味わったぞ。


全員が寝静まった後、若い坊主は縁側に立ち、月の光に照らされる自分の股口をじっと見つめていた。

神々しく天に向けて反りかえる身体の一部をじっと見つめていた。