。 円 zero 遠い月 大木の種 クリトリス 静止する振り子 お風呂場の覗き穴 離してしまった風船 ウィスキーのキャップ どこかの星から見た地球 アルファベットの何番目か 少年が宙に放り上げたボール 上から見た取っ手のないコップ 世界の内部と外部を隔てる…

石松子

私は羊だ。友達と呼べるものは、今は、もういない。昔、20年くらい前に、五頭の羊と、三頭の雄牛と二頭の雌牛と小さい人間が私の周りにいて、ガヤガヤしていたが、今はもう誰もいない。遠くに見えるハゲ山に何頭かいるのが見えるが、向こうはこちらが見え…

ラジオ体操

見たこともない虫が机の端で死んでいた。 その虫を見つけたのは「先生」がラジオ体操のテープレコーダーの再生ボタンを押してから2、3秒経ってからだった。カラカラと乾いた音をたてながら、中の重い車輪が回り始める。 「先生」は水色のジャージのズボン…

egg

白く細長い指が、白く乾いた殻に触れる。ざらざらした表面をなぞりながら、きれいに整えられた爪が音をたてる。一個、また一個と温かい曲線を描いた命が心地よい音をたてて、割れていく。 女はその半透明なものと、「オレンジ」色の突き出た丸いものと分けて…

テレサ(cello)part3

その週末には彼から電話があった。どうして私の電話番号が分かったんだろうなんて思わなかった。不思議に年を感じさせるその声が受話器から聞こえてきた時には、本当に心臓が爆発するぐらいにおどろいたが、その後に続くごめん、ごめんと情けない声で言い続…

テレサ(cello)part2

チェロを始めたのは、その男と会う6年ぐらい前からだった。私は孤独だったが、その大きな存在感のあるチェロを抱きしめていると、不思議と心が安らいだ。まるでそれは男にあつく抱きしめられている時のようで、初めて手を触れた時、私の胸を熱くさせ、不思…

テレサ(Cello) part1

2009.04.26 Sunday 01:20 また、夏がやってきたのだ。 早いものでここに住むようになってから今年でもう十三回目の夏を迎える。そういえば、あの時も同じように、こんな暑い日に遠い空で浮かぶ白い雲をぼんやりと眺めていた。 あの時と違うのは、私が住んで…

テレサ(toilet)

2009.04.26私は今、ある公衆トイレの個室でこれを書いている。 どうしてこんなところにいるのか、どうしてここでこれを書こうとしているのか、自分でもよくわからない。しかし、ここにいるということに何かの意味を持つことはなんとなく理解している。意識で…

瘡蓋

教室の窓に貼られたポスターが少し傾いている。誰かが一度貼り直したようなセロハンテープの跡が上部に残っている。そこには大きく「富士山に登ろう」と書かれてあって、富士山を、ではないのかと考えていたら、またあそこの古傷がかゆくなってきた。 昨日、…

其の時の夜明け

さっきから私はこの町の雲行きが気になって仕方がない。 ギュルギュルと流れていく雲はさまざまな形に変化しながら私の視界の端から端を走る。私の届かぬ世界では風は直線に流れていくと聞いた。何処の角を曲がるわけでもなく、ただ真っ直ぐに。 うねる太陽…

プルメリア

プルメリア2009.07.14 Tuesday 10:27 筝絎贋違�綺茵�ず�障 その夜はうねるような暑さが大気中を流れ何人もの坊主が修行中にもかかわらず氷を口いっぱいに頬張り、やっと寝床についたのだった。 暗い蚊帳の中で一人の若い坊主が、僕はもう帰りたいとつぶやい…

chaos 2

少年はそれまでほとんど姉に育てられた。母親は少年を産んだ直後に白痴になり、姉は6歳のころから、少年や兄の世話で毎日を過ごした。父親は漁師で3ヶ月に1回帰ってくるかどうかもわからないほどで、河を下ってはるか隣国へ魚を売りに行っていた。その時…

chaos

深い河が目の前で流れている。昨晩上流で降った大量の雨で河は増水し、流れはいつもよりも急だ。細い流木のようなものが右から左へ少年の視界を猛スピードで走って行く。 これからもっと増水してここまで来そうだな、と少年は自分が立っている高い堤防から見…

ピンクの象 2

この世で大切なもの3本目に入るケイタイをなくしてしまったあたしは、タクシーを降りるなりまずケイタイショップを探した。入るといきなり、若くて胸の大きい女の子がいかにもあなたを待っていましたみたいな笑顔でいらっしゃいませえ!と目の前で叫んだの…

ピンクの象

高橋は誰かに似ていた。さっきからそれを思い出そうとしている。 あれは誰だっけな、ヒステリックでインドで行方不明になったトオルだったかな、あ、違う、トオルはもっと髭もじゃで、顎の辺りとかがもっとシュッとしていた、変態なセックスをたくさんしたケ…